稲田朋美防衛大臣の辞意。いまあらためて考えたい「国防」のあるべき姿
防衛省、自衛隊という組織の歪み
もし有事があれば大変なことになる
現在の内局支配は、これらの歴史上の失敗例以上の弊害を生むでしょう。幸い、有事がなかったから、その弊害が顕在化していないだけのことです。時々起きる事件や事故の際、その兆候が見られます。部隊から一本の指揮系統を通じて大臣に報告が上がればよいのに、内局を経由するため、報告が遅れる事態は珍しくないのです。
内局は官僚的なフィルターをかけます。自衛隊側からの通報を受けても「ああ、そうですか」で済まず、いろいろな追加情報を要求するので余計な作業が増え、さらに報告や処置が遅れるのです。部隊や現場の知識がないため、理解するのに時間や情報を必要とすることもあります。
自衛隊が政治の統制を外れて、勝手に戦争をしたりクーデターを起こすような事態を心配するのは、まさに杞憂(きゆう)です。自衛官の意識も戦前の軍人とはまったく違うし、社会や政治情勢もそんな時代ではありません。民主国家の中で、なぜ日本のみが軍隊(自衛隊)や軍人(自衛官)を信用しないのでしょうか。
私からすれば、マスコミも政治家も内心では自衛隊を軽んじているのに、脅威であるかのように吹聴しているように感じられます。もっとも、本当に怖いものは批判できないものだから、自衛隊攻撃や脅威説それ自体が、自衛隊軽視の証拠とも言えます。自衛隊のクーデターなど、だれも本気で起きると思ってはいないのです。
(『日本の軍事力』より構成)
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